ケースのデザインにこだわって形にするというのは、自作エフェクターの楽しいところでもあり悩ましいところでもあります。塗装にこだわるのもいいのですが、私はアルミの美しさを活かしたデザインが好きです。
というわけで今回はアルミケースの磨き方と、鏡面仕上げの仕方をご紹介します。
とはいえ私は金属磨きのプロではありません。類似情報をネット上で探し実践して自分なりに得たノウハウですので、詳しい人からすると違っていることもあると思います。その際はぜひご指摘いただければと思います。
さらに自分が鏡面仕上げにたどり着いたのは、技術協力した子供の夏休みの自由研究のアルミ玉作りがきっかけなので、この記事に使う画像はそのアルミ玉となります。作業風景も子供が登場します。
必要な道具
耐水ペーパー
#150
#240
#320
#400
#600
#800
#1000
#1500
#2000
コンパウンド #4000相当
ピカール
使い捨て手袋。ゴムやラテックスではなくてビニル薄手のやつ。
以上です。
ペーパーは全種類
ポイントは耐水ペーパーです。ホームセンターなどでバラ売りしていると思いますがそれを#150から#2000まですべて揃えてください。ケチって荒目を飛ばしてはいけません。ナンチャラセットとかいうのもNGです。間の何枚かが入っていない場合があります。必ず全ての荒目を揃えることが大事です。
また、広い面積をペーパーがけする際に平面を出しやすくするサンドペーパーホルダーなどの道具がありますが、エフェクターのケースなら必要ないと思います。初めは私も使っていましたが、力が入りすぎて傷が付いてしまいました。できるだけ素手でやったほうがいいです。ペーパーがけは繊細な作業です。
ペーパーがけのコツ
1.常に水にさらして
ペーパーがけは必ず水にさらしながら行います。でないとうまく磨けないのと、削りカスがケースを傷つけてしまいます。
2. ペーパーを交換するごとにきれいに洗う
ペーパー1種類で30分はかけるので水をバケツに貯めて行いました。次のペーパーにする際に必ずバケツ自体を石鹸洗いして水を入れ替えてください。もちろんケースも一回ごとに石鹸で洗います。大きな荒目で削ったカスが残っていると、次のペーパーに行ったときケースを傷つけます。
3. 一方向の往復は鉄則!
ペーパーをかける向きは一方向往復のみです。ぐるぐると円にするとか、縦、横、斜めとするとかそういうのはNGです。こうと決めたらその方向の往復のみにしてください。でないと消えないヘアライン傷が残ります。
4. 力加減はやさしく
ペーパーをかける際は優しく。これは「削る」作業ではなく「磨く」作業です。特に荒い目のペーパーで深い傷をつけてしまうと、さらに大きな荒目に戻らないと修復できません。何度かやっているとコツがつかめるのですが、最初は優しくやってください。
速度を落としてゆーっくりやる必要はありませんが、あまりに速く手を動かしていると作業が雑になります。気持ちよくシャッシャと磨ける感じで。ペーパーがけが初めての人はフタの裏など目立たないところで練習をしてもいいと思います。
磨いていると、初めは引っかかりがあったのに急にサラリと軽くなるのを感じます。全体がそうなるとゴールです。そこを目指してください。力任せに削っているといつまでたっても軽くなりません。ペーパー1種類でだいたい15~30分づつくらいを目安に頑張りましょう。
5. 最初のペーパーが肝心
最初の#150を一番大事にすること。ここで傷を残してしまうともう二度とその傷は取れないと思っていいです。とにかく最初は丁寧にやさしく。ここでとれない大きな傷は#60まで戻って、#100、150と進んでください。とはいえここまでくるとかなりきつい作業なので、初めから傷の無いきれいなケースを選ぶようにしてください。
6. 角は鬼門!
それから、Hammondケースの場合は四隅のネジ穴の箇所が凹んでいて、上図の黒く描いたところに磨き残しが出てしまいます。シャカシャカがんばっても赤いところばかり削れていくので、イラついてガリガリ削りたくなりますがそこは落ち着いて。指の柔らかさと丸さを利用して凹みにペーパーを添わせて丁寧に磨いてください。斜め方向からも磨くことになりますが、できるだけ一方向往復の鉄則は守って。
では作業を始めていきましょう。
実際の作業の様子
ハンマーで叩いて整形したアルミ玉
#60で1時間かけて削り整形
#100(30分研磨)ここがエフェクターケースの最初の状態だと思ってください。
#150(30分研磨)
#240(30分研磨)
#600(30分研磨)ここで終わっても十分にきれいなケースになります。
#800(30分研磨)このへんまでかっこいい金属地の色だったのに 、ここから先はだんだん白くなっていきます。でも不安がらずに丁寧にみがいてください。
#1000(30分研磨)
このあと#1500、#2000をそれぞれ30分。残念ながら画像はありません。
コンパウンドとピカール
完成
こうなります。スマホを構える私が写り込んでます。
ニキビ痕のような傷は、アルミホイルをハンマーで叩いてボールにする際にできた傷で、#60の段階で無くならずどうにもできなかった傷です。
ほかにも手抜きと力づくでやってしまった小傷が無数にあります。そういう傷は経験を積むごとに少なくなっていくと思います。
もっときれいな鏡面に追い込むには、#2000から先のコンパウンドの荒目の種類を増やすといいと思います。私の場合、#2000から#4000へ急に上がってしまったため、白っぽさ(微細な傷)が残ってしまいました。これをペーパー#2000→コンパウンド#2000→2500→2700→3000…とするともっと面白い結果になったかもしれません。
脱法BOSSコンで実践
BOSS MT-2のケースを適当に磨いたあと放ったらかしていたものを、改めて磨き直したのもの。もともと大きな荒目ペーパーでゴリゴリとやってしまったり、ランダムな方向に動かしていたものなので、修正したとはいえ小傷がたくさん残ってます。なかなかきれいになったとはいえ、アルミ玉にはかないませんね。
こんな風に地道な努力で鏡面仕上げができます。私も次こそは完璧な鏡面を目指してがんばりたいと思います。
この作業を一回やると、iPodの背面をピカピカに磨いている職人さんの凄さが分かるはずです。とんでもない技術ですよあれ。ぜひ体験を通してそれを感じてほしいです。